第4話より。
八雲の師匠である七代目 有楽亭八雲の愛人、
みよ吉のお店に足繁く通うことになった若き八雲(当時は菊比古という二つ名でした)。
みよ吉「今度は小唄の稽古。三味線弾いてよ」
菊比古「いいですよ」
みよ吉「梅が香を……」
工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工
……何がおかしいのかって?
これに気がついた方は、三味線音楽を知っている方です。
基本的に、小唄の三味線は撥では弾きません。
一般的には「爪弾き」といいますが、
実際は人差し指の肉で弦を弾きます。
というのも、爪で弦を弾くと爪に弦が当たる音が出てしまい、コキコキとうるさくなってしまうからです。
ですので、正確には指弾きです。
もちろん例外はありますが、
一般的に小唄というと狭い場所で呟くように歌うのが特徴ですから、こんな描写はありえないのです。
ちなみに、原作を見てみると……。
撥は描かれていませんね。
これを描いた人、
原作の読み込みが足りませんよ!
これを描いた人は、三味線だから何でもかんでも撥で演奏させておけばいいんじゃね? っていう感じでいい加減に描いているんだと思います。実にひどい。
撥を使うもので小唄に近いジャンルは端唄や俗曲で、小唄の曲を端唄風に演奏することもあり実にややこしいですが、ここではセリフで「小唄」と言っているのですから、菊比古(八雲)は指弾きで披露しないといけません。それに紋切り型のイメージを使用するのは小説やアニメの常道。違いを分かりやすくするため、複雑なことは考えず小唄であれば指弾き、というイメージがあるのですからこれを用いなければ違和感が先に出ます。
「三味線音楽なんて知るわけないだろ」という方もいらっしゃいますが、wikipediaで検索すれば大まかな違いは分かるはずですし、動画もYouTubeを見れば一目瞭然。ということは、この作画担当は手抜きをした、といっても過言ではありません。見る人が見ればわかるのです。
こんなことを言うと「これは三味線アニメじゃないだろ」という方が必ずいらっしゃいますが、以前艦これのお話をしたときにさんざん議論したことですので、こう思った方はこちらのエントリーをまずお読み下さい。
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ここでは「神は細部に宿る」とだけ申し上げておきます。
細部がしっかりしていると、物語が生き生きとしてきます。
以前じょしらくでも三味線演奏の酷い描写があり、指摘したところ炎上したことがありました。
近年では時代背景に合わせて車やオーディオ、カメラなどの小物も合わせることが当たり前となっています。
アニメは総合芸術ですので、三味線音楽から落語、果てはロボットに至るまでさまざまなものを描いて動かさなければなりません。そこで問われるのが編集力。何が重要で何が重要ではないか(オミットすればよいか)を判断し、作品の中に生かしていく努力が必要なんですね。
円盤になったときに、修正されることを祈ります(予算の関係だと無理でしょうかね……)。
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コメント
原作では撥が無かったのであれば、アニメでは分かり易さを重視して敢えてそうしたのではないでしょうか?
『「三味線音楽なんて知るわけないだろ」という方もいらっしゃいますが、wikipediaで検索すれば大まかな違いは分かるはずですし、動画もYouTubeを見れば一目瞭然。』と仰っていますが、それ以前に私がそうなのですが三味線を名前くらいしか知らない人間は撥で弾くと言う印象があります。この記事を読むまで指で弾くなんて考えもしませんでした。
そういう視聴者が抱く三味線の印象に対する分かり易さを求めた結果なのでは、と思いました。
ミオさん
書き込みありがとうございます。
落語のお話は三味線音楽がつきもの。
じょしらくでも書きましたが、
撥の持ち方や構えなど、ちょっとしたことでも
見る人が見れば「全然知らない奴が描いているな」
とわかりますし、変な描写をされたら不愉快に感じます。
逆に言えば、こういった描写がしっかりしていると
話にリアリティが加わって素晴らしいものになるんです。
知らない人向けに分かり易さを優先させて
撥を描いたのだとしたら、とてもではありませんが
許せたものではありません。
三味線音楽を知っている人にしたら「当然」の話ですから。
そこをスルーしてしまうと「たまゆら」のときと同じになってしまいます。
こういったことは知っている人がきちんと文句を言っていかないと改善されませんし、いつまでたっても「アニメだから」と言われてしまうんですね。見ている人は三味線音楽を知らない人が多いとはいえ、作り手までもがいい加減なことをやっていい理由にはならないのです。