先日、氷菓第12話に登場したカメラを解説しましたが、
今回は音楽について。
写真部の部員が千反田えるに声をかける前、
えるちゃんが楽しんでいたのがアカペラ部によるパフォーマンス。
歌っていたのは坂本九の「上を向いて歩こう」でした。
当時のシングルレコードです。
2012年現在、アメリカのビルボードで全米1位となった楽曲としても知られています。
1963年のことですから、もう半世紀近くになるわけです。
日本でのリリースは1961年。
作詞は、当時駆け出しの永六輔。
作曲は、中村八大。「こんにちは赤ちゃん」、「遠くへ行きたい」などのヒット曲があります。
実はジャズ・ピアニストで、ロカビリーの前に流行していた、ジャズ・ブームに乗って
ビッグ・フォーというバンドで活躍していました。
この曲の魅力は、
シャッフルのリズムと工夫を凝らした歌唱にあるんですね。
http://youtu.be/IK9CXWKwAn8
シャッフルは、シンバルの「チーチッキ、チーチッキ」というリズム。
ボーカルは「あるこうぉ・うぉ・うぉ」「ようぉ・うぉに」といった歌い方が特徴です。
実はこの2つの要素には、ロカビリーの影響が見られます。
シャッフルのリズムは、エルヴィス・プレスリーの「ハウンド・ドッグ」や「冷たくしないで 」といったロカビリー曲でよく使われていました。もちろん、ロカビリーにしかないというのではなく、カントリーやジャズにもありますが、坂本九が大好きだったのは
エルヴィス・プレスリーだったことはよく知られています。
「あーるこうぉ・うぉ・うぉ」「ようぉ・うぉに」といった歌い方は、エルヴィスの
「アイ・ウォント・ユー、アイ・ニード・ユー」などのように、言葉を細切れに発音する方法を取り入れています。
http://youtu.be/l1Obxq3kvnc
歌い方に関しては、作詞の永六輔や、坂本九の兄、評伝を書いた人などがいろいろ述べていますが、やはり本人の話が一番説得力があると思います。とある雑誌のインタビューでは、こんなことを述べていました。
ウォウウォウとか、ムフイてなんて調子は、プレスリーがお手本なんです。あの曲をもらったとき、どうしようかと思ってね。だって、メロディに対しておそろしく言葉が少ない。……いろいろ考えてああいう歌い方をしたわけです。あの曲を作った中村八大さんは、ボクならプレスリーみたいに歌うだろうと思っていたらしい。
「氷菓」の12話に出てきたものを聴いてみると、残念なことに原曲のよさが全部そぎ落とされています。
歌は上手いのですが、歌い方の工夫がまったくないのと、リズムがシャッフルではないから上を向いて歩いている情景が出てこないんですね。
ただこれは、歌っている人たちが悪いとは断言できません。
1980年にテイスト・オブ・ハニーが「上を向いて歩こう」に英語の歌詞をつけて、バラード・アレンジにしたものが大ヒット。こちらも全米1位となっています。
その後、4.P.M.が1995年に再びカバーしてヒットしています。
彼らはアカペラ風にして歌ってもいます。
おそらく、これが元ネタになっているんでしょう。
http://youtu.be/a-B9MWNQhmI
この2曲、ロカビリーの影響を受けて、坂本九が試行錯誤しながら作り上げた歌い方、そして楽曲を特徴づけるシャッフルのリズムが、ごっそりと抜け落ちているのがわかります。
重厚さを出すためにリズムが平板になっているんですね。
坂本九のカバーした彼らのマネではなく、もう一度原点回帰して坂本九のバージョンを聴いたり、カバーしたりといった動きが出てこないのかなぁと思います。
彼がどんな風に悩んで、工夫して、この曲を作り上げていったのか、というのを考えずにカバーされている現状を見ると、ちょっぴり寂しい気持ちになります。
えるちゃんも困惑しています。
彼女だったら、なぜそうなったのか、「私、気になります!」と言ってくれると思います。
ちなみに、1961(昭和36)年のヒット曲はこんなのがありました。
坂本九 12CD-1135
坂本九アニバーサリー・ベスト~689コンプリート
第12話を収録予定↓
(amazon)
氷菓 限定版 第6巻 [Blu-ray]
氷菓 限定版 第6巻 [DVD]
(楽天)
【送料無料】氷菓 第6巻(Blu-ray Disc) |
【送料無料】氷菓 第6巻(限定版) |
◎その他のお買得セットも必見!ページ内おすすめバナーをチェック!ニコン D5100 18-55 VR レ… |
コメント