このブログでは「アニメと特撮に出てきたカメラを特定する」という
何ともマニアしか注目しそうにない話題を取り上げ続けてきました。
先日、作品数と特定できたカメラの数が200を超えたので
まとめの意味を込めて
「アニメと特撮に出てきたカメラを200機種特定して、わかったこと」を
書いてみようと思います。今回はアニメについてです。
カメラがリアルに描かれるようになった
まず第一にわかったことは、
「カメラ本体が、昔と比べてはるかにリアルに描かれている」
ということ。
そんなの当たり前やろー! と言われそうですが、
まずは事実をしっかり確認することから始めるのが大切です。
それでは、40年ほど前の作品を見てみましょう。
『魔女っ子メグちゃん』(1974-75年)
描写力の違いは一目瞭然ですね。
なぜこれだけの違いが生まれたのか。簡単にいえば、
セル画からパソコンによるデジタルペイントに移行した、というテクノロジーの進化が大きいと思います。
これにより、より細かな描写が可能となりました。
細かな描写が可能になるほど、リアリティが増す。
リアリティが増すということは、現存するカメラに近くなっていくということです。
これまでは、カメラのように小さくてボタンや突起物がいっぱいある小道具は、
描くのが面倒なので敬遠される傾向にありました。
現在でも、いい加減に描いているものもたくさんありますし、
動かすのが大変ということもあり、ほんの一部にしか登場しないことが多いです。
カメラ描写のリアリティが増して実現したこと
しかし、こうしてリアリティが増したことで実現できることが増えました。
それは、本編(ストーリー)や設定にカメラという小道具を絡めやすくなったのです。
いくつか例を挙げてみましょう。
『けいおん!』(2009年)
コンパクトなフィルムカメラ、LOMO LC-Aが登場。このカメラは、
秋山澪が好んで使っているという設定になっています。
『B型H系』(2010年)
写真部に入っている小須田はカメラ好きで、
いつもカメラを持ち歩いていて写真を撮っています。
『たまゆら〜hitotose〜』(2011年)
主人公のぽっては、父親の形見であるローライ35Sで撮影するのが大好きです。
『フォトカノ』(2013年)
主人公の前田一也は、父からもらったデジタル一眼レフを使って、
写真を撮り始めるようになりました。
このように、「写真が趣味」というキャラクターを登場させることが
容易になったことで、本編(ストーリー)にも写真を撮るシーン、
写真を通じて物語を展開していくことができるようになったんですね。
1960〜70年代は、カメラ好きの主人公が活躍するアニメって、
ほとんど無かったのではと思います
(ただし、すべてのアニメを見たわけではないので断言できませんが)。
カメラの登場シーンにしても、
記念撮影、スパイ、フラッシュで敵の目をくらます、
アイドルや女性の水着、パンチラを撮るといった程度の使われ方でした。
キャラクターやストーリーにカメラが深く関わるようになる、という傾向が
顕著になっていくのは、先ほど述べたように
セルアニメからデジタルペイントに移行し、定着していった時期と重なります。
2000年代初頭あたりからといったところでしょうか。
日常生活とカメラとの関わりの変化
それから忘れてはならないのは、カメラと私たちの生活との関わりが
大きく変化してきた、ということ。
アニメだけ見ていると気がつかないので要注意です。
ここ半世紀ほどのカメラの歴史を簡単に紐解くと、高性能な大型カメラと、
コンパクトだけど機能に制約のある小型カメラの2種類に大きく分かれて
進化してきました。
こちらは極端な例ですが、上はマミヤのRB67と
下は『けいおん!』の澪が持っているLOMO LC-A(初代)。
どちらもフィルムカメラですが、使っているフィルムの大きさも違います。
一般的には、小さくて持ち運びに便利、値段も一眼レフよりもずっと安い
コンパクトカメラが使われていましたね。
昔はデジカメがないから、当然フィルムを使っていました。
当時はフィルムの値段も高く(今は使う人が少なくなったので高くなっていますけど)
フィルムの代金+現像・プリント代がかかりましたから、
今のデジカメや携帯・スマホみたいにパチパチ撮れなかったんですね。
それに、コンパクトカメラではマクロが使えない機種がほとんどなので、
お弁当とか雑貨とかを気軽に寄って撮ることもできませんでした。
そうなると、カメラが使われる場所は旅行、思い出作りのための記念写真、
水着写真を撮るくらいの使われ方しかなかったといえます。
では、現在はどうかというと、コンデジも小さいし、
携帯やスマホでは容量が許す限り
いくらでも、好きなときにパチパチ撮れます。
気に入らなければ消せばいいし、プリントしなければ現像代もかからない。
最新の携帯やスマホの価格はそれほど安くはありませんが、
中古なら格安で、コンデジも5000円くらいから買えます。
つまり、テクノロジーの進化と低価格化によって、
誰でも日常生活のいたるところでカメラを使えるようになったわけです。
そしてもうひとつ重要なのが、テクノロジーの進化による
カメラ、写真のあり方についての考え方の変化が挙げられます。
現在に至るまで、「きれいに、正確に写すことが重要」をスローガンに
カメラは進化してきました。ぼやけてる、ブレてる、周辺が流れてる
写真は論外、というのが基本でした。
しかし、今ではきれいな写真が撮れるのは当たり前となってしまったので、
今度はその反動として「ゆるい」写真が見直されるようになったんです。
ブレてても、発色がおかしくても面白ければいいじゃないか、というのが
トイカメラのブームにもつながりました。
『けいおん!』の澪が持っているLOMO LC-A(初代)なんかが
そのよい例です。
しかし、今でも写真好きの60代以上の人にトイカメラで撮った写真を見せると
「こんなの写真じゃないだろ!」と一蹴されることが多い。
昔は技術や価格の問題があってキレイで正確な写真を撮ることが難しかったので、
ゆるい写真は邪道、という考え方が主流なんですね。
しかし、現在はこういう写真も「アリ」という価値観に
徐々に変化してきています。
こうしたことも、プロではないアマチュアの人々が
大量にカメラを始めることができるようになった理由のひとつといえます。
ファッションで持ち歩くか、携帯やスマホで撮っていることが多いので、
カメラを使っているという感覚が減っている気がしますね。
それだけ日常生活に密着するようになったということかもしれません。
こういったことから、日常生活に深く関わるようになったため、
アニメ作品にも影響を及ぼす下地ができてきたわけです。
さらに、SFなどと違う人々の日常を描いた「日常系」といわれる
アニメの隆盛もあって、近年ではアニメにカメラが頻繁に登場するようになった
というわけです。
ちょっと長くなってしまったので、今回はここまで。
こうしたアニメでカメラのリアルな表現が可能となり、
キャラクター、ストーリーにカメラが絡むようになったことで、
アニメとカメラの関わりはどうなるのか、といった考察は次回に行います。↓
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関連リンク:
アニメ・特撮に出てきたカメラ〜取り上げた作品数と特定したカメラが200を超えました!
アニメと特撮に出てきたカメラを200機種特定して、わかったこと(1)
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